映画『襲名』

白い衣裳で、ヴェネチアに立つ — 『襲名』が世界の観客の前に出た二日間

2026年9月5日(土) · 4分で読めます

2026年9月4日から5日、映画『襲名』(国際題 SHUMEI)が第83回ヴェネチア国際映画祭で上映された。市川團十郎は扮装のまま記者撮影会に立ち、会場前の大型スクリーンにもその姿が映った。歌舞伎の「襲名」が、訳されないまま世界の観客の前に置かれた二日間の記録。

KEY FACTS

  • 映画『襲名』(国際題 SHUMEI)は、第83回ヴェネチア国際映画祭(2026年9月2日〜12日)の Venice Open 部門・コンペティション外で上映された。
  • 上映は9月4日〜5日。会場はリド島。監督は三池崇史、配給はK2 Pictures。
  • 市川團十郎は歌舞伎の扮装のままレッドカーペットに登場した。歌舞伎の衣裳でレッドカーペットを歩くのは史上初の試みと報じられている。
  • 市川團十郎は白い衣裳・鬘・白塗りの扮装で記者撮影会にも立った。市川新之助と三池崇史監督も同席している。
  • 会場のパラッツォ・デル・カジノ前に設けられた大型スクリーンにも、扮装の姿が映し出された。
  • 日本での公開は2026年9月25日。
第83回ヴェネチア国際映画祭の記者撮影会。白い衣裳と鬘、白塗りの扮装で立つ市川團十郎
第83回ヴェネチア国際映画祭 記者撮影会にて

何が起きたか

第83回ヴェネチア国際映画祭は2026年9月2日から12日まで、イタリア・ヴェネチアのリド島で開かれた。映画『襲名(しゅうめい)』は、この映画祭の Venice Open 部門でコンペティション外の作品として、9月4日から5日にかけて上映された。国際題は SHUMEI —— 映画祭の公式表記では Shumei: The Living Legacy of Kabuki。監督は三池崇史、配給はK2 Pictures。日本での公開は9月25日である。

ヴェネチア国際映画祭は1932年に始まった、現存する国際映画祭のなかで最も古いものとされる。歌舞伎を主題にした作品がこの場に出るということ自体が、日本の外で歌舞伎がどう受け取られるかを試す機会になる。

水上タクシーの桟橋に到着した一行
会場へ

扮装のまま、赤い絨毯を歩いた

團十郎(だんじゅうろう)は、歌舞伎の扮装のままレッドカーペットに登場した。歌舞伎の衣裳で赤い絨毯を歩くのは史上初の試みだと報じられている。タキシードに着替えて「日本から来た俳優」として並ぶのではなく、舞台の姿のまま世界の映画人の列に入った——この日いちばん大きな出来事は、上映そのものよりも、そのことだったかもしれない。

記者撮影会にも、白い衣裳に鬘、白塗りのまま立った。背景は「83 MOSTRA INTERNAZIONALE D'ARTE CINEMATOGRAFICA」の文字と有翼の獅子が並ぶ映画祭の公式パネル。同じ場に、黒紋付・縞の袴の市川新之助(いちかわ しんのすけ)と、三池崇史監督が並んだ。別のカットには、撮影会の直前に衣裳を整えてもらっているところも残っている。扮装は一人では着られない。その事実が、映画祭の壁の前でもそのまま続いていた。

撮影会の直前、衣裳を整えてもらう扮装の市川團十郎
撮影会の直前
記者撮影会に並ぶ市川新之助・市川團十郎・三池崇史監督
市川新之助・市川團十郎・三池崇史監督

会場前の、大型スクリーンに

会場のパラッツォ・デル・カジノ前には大型スクリーンが立てられ、扮装の團十郎が大きく映し出された。スクリーンの左上には放送局RAIのロゴ、右手には映画祭の意匠が並ぶ。歌舞伎座(かぶきざ)の看板でも、日本のテレビ画面でもない場所に、白塗りの顔があった。

この日の写真のなかで、いちばん多くを語っているのはおそらくこの一枚である。ただし本サイトでは、手前を歩いていた一般の来場者が識別できる形で写っていたため、スクリーンと会場の看板だけを残して切り抜いている(掲載可否の判断は docs/image-rights.md に記録した)。

パラッツォ・デル・カジノ前の大型スクリーンに映し出された、扮装の市川團十郎
会場前の大型スクリーンに映る(切り抜き)

「襲名」を訳さずに運ぶこと(編集部の見方)

ここからは編集部の解釈である。この映画の国際題は SHUMEI であって、Succession でも Inheritance でもない。名を継ぐという営みを、意味の近い英単語に置き換えずに、そのまま音で持っていった。ZEN や IKIGAI がそうであったように、訳さないという選択には、意味を痩せさせないための賭けがある。

扮装のまま撮影会に立つという選択も、同じ線の上にあるように見える。舞台の外では脱ぐもの、という前提を外して、扮装のままヴェネチアの壁の前に立った。説明を尽くすより先に、まず見せる。歌舞伎が400年やってきたのはそういうことだった、とも言える。

この二日間が何をもたらしたのかは、まだ分からない。受賞や評の話ではなく、ヴェネチアで白塗りの顔を見た人が、そのあと何を思ったかという話である。それは時間をかけて確かめるほかない。

映画祭会場での取材。黒紋付姿の三人がカメラの前に立つ
現地での取材

日本での公開は9月25日

映画『襲名』は2026年9月25日に日本で公開される。ヴェネチアで先に世界の観客の前に出た作品を、今度は国内で観ることになる。上映館・上映時間は公式の案内をご確認ください。

写真

リド島の突堤に立つ市川新之助
リド島の突堤で
石畳の細い路地
路地
岸辺のカフェのテラス席。奥にサン・マルコの鐘楼
岸辺にて
桟橋に着けられた木造の水上タクシー
水上タクシー
夕暮れの運河と橋
運河の夕暮れ
煉瓦の欄干越しに見る潟の日没
日没

関連用語・演目

関連公演

2026年9月4日(金) – 9月5日(土)

映画『襲名』ヴェネチア国際映画祭上映

イタリア・ヴェネチア

映画『襲名』(国際題 SHUMEI)が第83回ヴェネチア国際映画祭で上映されました。團十郎は歌舞伎の扮装のままレッドカーペットに登場——歌舞伎の衣裳で赤い絨毯を歩くのは史上初の試みと報じられています。記者撮影会にも扮装で立ち、会場前の大型スクリーンにもその姿が映りました。歌舞伎の「襲名」という営みが、世界の観客の前に開かれた——歌舞伎を世界共通言語へ運ぶ、大きな一歩です。

執筆
D-13編集部
監修
確認中
事実確認
D-13編集部
公開日
2026年9月5日(土)
最終更新日
2026年9月5日(土)
情報確認日
2026年9月5日(土)

出典・参照

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