kuromisu

黒御簾

くろみすthe offstage music room for geza music

INSTANT ANSWER一撃回答

舞台下手にある、黒い御簾を掛けた小部屋。中では唄や三味線(しゃみせん)、鳴物が芝居に合わせて演奏され、その音楽は下座音楽と呼ばれる。

黒御簾(くろみす)は、舞台下手(客席から見て左)にある、黒い御簾を掛けた小部屋である。中では長唄(ながうた)の唄方と三味線方、鼓・太鼓・笛などの囃子(はやし)方が、御簾越しに舞台の進行や俳優の呼吸をうかがいながら生演奏を続ける。この音楽は下座音楽、または黒御簾音楽と呼ばれる。

演奏は唄や三味線の曲にとどまらない。鳴物は、風や雨といった自然の音、動物の鳴き声、幽霊が現れるときの音など、数多くの効果音を受け持つとされる。姿を見せないまま場面の空気を一変させる、歌舞伎の「見えない演出家」である。

鳴物の中でも心憎いのが「雪音(ゆきおと)」である。現実には音もなく降る雪を、歌舞伎は、先端を布などで包んだ桴(ばち)で大太鼓を柔らかく打つ音で表すとされる。低くくぐもった響きが客席を包むと、不思議と雪の降りしきる静けさが立ちのぼる。音のないものを音で描く、下座音楽の想像力を象徴する一手である。

黒御簾は特定の家に属さない、歌舞伎全体の音の仕組みである。見えないものが舞台を支えるという発想は黒衣(くろご)や柝とも通じ、市川宗家(いちかわそうけ)の演目を含む今日のあらゆる歌舞伎の舞台に息づいている。

舞台黒御簾下手ツケ上手花道客席↑ この図は客席から舞台を見た向き
音は左右から来ます。客席から見て左——下手が黒御簾で、唄・三味線・鳴物がここから流れます。右——上手ではツケが役者の動きを打ち留めます。同じ木の音でも、柝は劇場全体の進行を司る別の役割です。
SOURCES

出典・監修

執筆
KABUKI Universe編集部
監修
市川團十郎
公開日
2026年8月15日(土)
最終更新日
2026年9月9日(水)
監修済み

監修は、市川團十郎に趣旨と要点を確認いただいたことを示します。本文は編集部の文章であり、市川團十郎の発言ではありません。文責は編集部にあり、記述の誤りは編集部の責任で訂正します。 編集方針を読む