chūnori

宙乗り

ちゅうのりthe "flying" stage effect

INSTANT ANSWER一撃回答

ワイヤーで吊られた役者が客席の上空を飛んで移動する演出。幽霊や妖怪、狐など人ならぬ役に用いられ、劇場全体が舞台になる。

宙乗り(ちゅうのり)は、吊られた役者が舞台や客席の上空を飛んで移動する演出である。江戸時代からある技法とされ、現代ではワイヤーロープを用い、花道(はなみち)のあたりから上昇した役者が一階客席の上空を通って、二階・三階席の高みへと消えてゆくのが通例となっている。

用いられるのは、幽霊や妖怪、人間に化ける狐といった、現実の理屈を超えた役どころである。頭上を役が飛び越えてゆく瞬間、客席そのものが物語の空へと変わる——劇場全体を舞台にしてしまう、歌舞伎のスペクタクルの極みといえる。

宙乗りの技法は江戸以来のものだが、近代には奇抜な見世物として顧みられない時期が長く続いた。それを昭和43年(1968)、国立劇場(こくりつげきじょう)の『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』で復活させたのが三代目市川猿之助(いちかわ えんのすけ)(二代目市川猿翁)とされる。狐忠信が宙を駆けるこの演出は大きな評判を呼び、以後、宙乗りは現代の歌舞伎に欠かせない人気の演出としてよみがえった。

宙乗りは特定の家の芸ではなく、ケレンと呼ばれる仕掛けの演出とともに歌舞伎全体が育ててきた言葉である。約束事の美学と大胆な見世物性が同居するところに、歌舞伎という芸能の懐の深さがよく表れている。

一階二階三階花道客席の上空を越えていく
宙乗り(ちゅうのり)——花道のあたりから上昇した役者が、一階客席の上空を通って二階・三階席の高みへ消えてゆきます。頭上を役が飛び越える瞬間、客席そのものが物語の空に変わります。図は経路を簡略化したものです。
SOURCES

出典・監修

執筆
KABUKI Universe編集部
監修
市川團十郎
公開日
2026年8月15日(土)
最終更新日
2026年9月9日(水)
監修済み

監修は、市川團十郎に趣旨と要点を確認いただいたことを示します。本文は編集部の文章であり、市川團十郎の発言ではありません。文責は編集部にあり、記述の誤りは編集部の責任で訂正します。 編集方針を読む