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引抜
ひきぬきthe on-stage instant costume change
INSTANT ANSWER一撃回答
仮縫いの糸を後見が抜き、観客の目の前で衣裳を一瞬にして別のものに変える仕掛け。舞踊の途中で舞台の色が塗り替わる。
引抜は、観客の眼前で一瞬にして衣裳を変化させる仕掛けである。あらかじめ衣裳の上に別の衣裳を重ね、袖や裾を太い糸で荒く縫い留めておき、舞台上で後見がタイミングよく糸を抜き取ると、上の衣裳がするりと脱げて下の衣裳が現れる。
『京鹿子娘道成寺』をはじめとする舞踊で多く用いられ、曲調の変わり目に衣裳の色柄が一変することで、人物の心の移ろいや場面の転換を鮮やかに映し出す。役者と後見の呼吸がぴたりと合った瞬間、客席からはどよめきと拍手が起こる。
引抜をもっとも堪能できる舞台が『京鹿子娘道成寺』である。白拍子花子が踊り継ぐうちに、曲の変わり目ごとに衣裳が替わり、恋する娘の心の移ろいを色彩で映してゆく。引き抜かれて白い衣裳となり、鈴太鼓を手に踊る場面はとりわけ名高く、役者と後見の息が合うたびに客席がどよめく——舞踊と仕掛けが一体となった醍醐味である。
引抜は特定の家の芸ではなく、所作事とともに歌舞伎全体が育ててきた衣裳の演出である。衣裳そのものを劇的な表現の道具に変えてしまう発想に、歌舞伎の美意識の粋が表れている。
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SOURCES
出典・監修
- 執筆
- D-13編集部
- 監修
- 監修確認中
- 公開日
- 2026年8月15日(土)
- 最終更新日
- 2026年8月16日(日)