bukkaeri
ぶっ返り
ぶっかえりthe costume flip that reveals a hidden identity
INSTANT ANSWER一撃回答
上半身の仮縫いを解き、衣裳を腰から返して一瞬で姿を変える仕掛け。隠していた本性を顕す「見顕し」の場面で用いられる。
ぶっ返りは、上半身の部分を仮に縫い留めた糸を抜き、ほどけた衣裳を腰から下へ垂らすことで、まったく別の姿に変わって見せる仕掛けである。垂れた布は下半身の衣裳の一部となり、内に隠されていた衣裳が上半身に現れる。人物が隠していた本性を顕す「見顕し」の場面で使われることが多い。
衣裳の一変は、隈取や音楽の変化と重なり合い、善人と見えた者が悪の正体を顕す、あるいは人が神霊や妖しの姿に変わる瞬間を、理屈抜きの鮮烈さで観客に届ける。引抜が場面の彩りの転換だとすれば、ぶっ返りは人物の内面の劇的な反転である。
ぶっ返りの効果で名高いもう一つの舞台が、明治20年(1887)に初演されたとされる舞踊劇『紅葉狩』である。信濃戸隠山の紅葉の宴で優雅に舞う美しい更科姫は、実は山に棲む鬼女——正体を顕す場面で衣裳がぶっ返り、たおやかな姫は一瞬にして恐ろしい鬼の姿へと変わる。初演で更科姫を勤めたのは九代目市川團十郎とされ、姫と鬼の落差が大きいほど、この仕掛けは鮮烈さを増す。
市川團十郎家とのかかわりでは、歌舞伎十八番『鳴神』の幕切れが名高い。戒めを破られ怒りに燃えた鳴神上人が本性を顕すくだりは、ぶっ返りの効果がもっとも鮮烈に伝わる場面の一つとされ、市川宗家の舞台とともに受け継がれてきた。
引抜
- 上の衣裳を重ねて荒く縫う
- 後見が糸を抜く
- 上が脱げ、下が現れる
場面の彩りが変わる
ぶっ返り
- 上半身を仮に縫い留める
- 糸を抜く
- 腰から下へ垂れ、内が顕れる
人物の正体が顕れる
この用語が分かる演目
この語を読んだら、次はこれ
同じ舞台の上でつながっている言葉です。ひとつ知ると、もうひとつが分かりやすくなります。
出典・監修
- 執筆
- KABUKI Universe編集部
- 監修
- 市川團十郎
- 公開日
- 2026年8月15日(土)
- 最終更新日
- 2026年9月9日(水)
監修は、市川團十郎に趣旨と要点を確認いただいたことを示します。本文は編集部の文章であり、市川團十郎の発言ではありません。文責は編集部にあり、記述の誤りは編集部の責任で訂正します。 編集方針を読む