歌舞伎D-13

bukkaeri

ぶっ返り

ぶっかえりthe costume flip that reveals a hidden identity

INSTANT ANSWER一撃回答

上半身の仮縫いを解き、衣裳を腰から返して一瞬で姿を変える仕掛け。隠していた本性を顕す「見顕し」の場面で用いられる。

ぶっ返りは、上半身の部分を仮に縫い留めた糸を抜き、ほどけた衣裳を腰から下へ垂らすことで、まったく別の姿に変わって見せる仕掛けである。垂れた布は下半身の衣裳の一部となり、内に隠されていた衣裳が上半身に現れる。人物が隠していた本性を顕す「見顕し」の場面で使われることが多い。

衣裳の一変は、隈取や音楽の変化と重なり合い、善人と見えた者が悪の正体を顕す、あるいは人が神霊や妖しの姿に変わる瞬間を、理屈抜きの鮮烈さで観客に届ける。引抜が場面の彩りの転換だとすれば、ぶっ返りは人物の内面の劇的な反転である。

ぶっ返りの効果で名高いもう一つの舞台が、明治20年(1887)に初演されたとされる舞踊劇『紅葉狩』である。信濃戸隠山の紅葉の宴で優雅に舞う美しい更科姫は、実は山に棲む鬼女——正体を顕す場面で衣裳がぶっ返り、たおやかな姫は一瞬にして恐ろしい鬼の姿へと変わる。初演で更科姫を勤めたのは九代目市川團十郎とされ、姫と鬼の落差が大きいほど、この仕掛けは鮮烈さを増す。

市川團十郎家とのかかわりでは、歌舞伎十八番『鳴神』の幕切れが名高い。戒めを破られ怒りに燃えた鳴神上人が本性を顕すくだりは、ぶっ返りの効果がもっとも鮮烈に伝わる場面の一つとされ、市川宗家の舞台とともに受け継がれてきた。

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