Q&A

観劇の作法・楽しみ方

大向うを掛ける人がほとんど男性なのは、女性の高い声が役者の声と重なりやすいためですか。女性が大向うを掛けることはできないのでしょうか?

ANSWER答え

女性を禁じる規則はありません。男性中心なのは慣行で、声域の説明は俗説として語られるものです。良い間で掛かる声であることが本質とされます。

KEY POINTS

ここだけ押さえる

  • 女性が掛けてはならないという規則は無い。男性中心なのは慣行である。
  • 「高い声は役者の声と重なる」という説明は、検証された定説ではない。
  • 実際に女性が掛け声を掛けた例も伝えられている。
  • 本質は性別ではなく、芝居の間を心得て、掛かるべき一点に短く掛けること。
図で見る

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舞台一階席上階席大向う「成田屋!」
大向う(おおむこう)——舞台から最も遠い上階後方の席。そこから飛ぶ屋号の掛け声が、間合いを計って役者の芝居を押し上げます。図は一般的な劇場の配置を簡略化したものです。

「大向う」をくわしく

くわしく

まず、大向う(おおむこう)(おおむこう)とは何かを整理しておきたい。劇場のいちばん後方の席、またはそこから掛かる掛け声のことである。「成田屋(なりたや)!」「待ってました!」といった声が、見得(みえ)の瞬間や登場の間合いに短く飛ぶ。これは野次ではなく、舞台と客席のあいだで長く育てられてきた作法で、掛け声の会が組織され、稽古を積んだ人たちが担ってきた面がある。

そのうえで質問に答えると、女性が掛けてはならないという規則は存在しないとされる。大向うの会が伝統的に男性中心で運営されてきたのは事実だが、それは慣行であって禁止ではない。実際に女性が掛け声を掛けた例も伝えられている。

「女性の高い声は役者の声と重なるから」という説明は、確かによく語られる。ただし、これは検証された定説ではなく、後から付けられた理由づけの色が濃い。声の高さよりも、掛ける間(ま)のほうが決定的である。早すぎれば芝居を邪魔し、遅すぎれば間が抜ける。掛かるべき一点に、短く、通る声で掛ける——この技術は誰にとっても等しく難しく、そこに性別の差は無い。掛け声の本質は、舞台への理解の深さそのものだと言ってよい。

この回答に出てきた言葉

大向うの会
掛け声を掛ける人たちの集まり。稽古を積み、劇場と関係を築いてきた。
掛け声
屋号(やごう)などを短く呼びかける声。見得(みえ)や登場の間合いに合わせて掛ける。
SOURCES

出典・記載の方針

執筆
D-13編集部
公開日
2026年8月25日(火)
最終更新日
2026年8月25日(火)