ōmukō

大向う

おおむこうthe shouts of appreciation from the back of the house

INSTANT ANSWER一撃回答

見得(みえ)や登場の瞬間に、客席後方から「成田屋(なりたや)!」などと屋号(やごう)を呼ぶ掛け声、またその掛け手。舞台と客席をつなぐ歌舞伎独特の文化。

「大向う(おおむこう)」は、もともと舞台から最も遠い後方の客席を指す言葉で、そこから、その席で観る芝居通の観客、さらに彼らが送る掛け声そのものを指すようになったとされる。掛け声の中心は「成田屋!」のような屋号で、代数(「十三代目!」)などが掛かることもある。

声を掛けるのは、見得が決まる瞬間や、花道(はなみち)での登場・引っ込みなど、芝居の呼吸が頂点に達するとき。台詞に重ならぬよう一瞬の間を計る、それ自体が熟練の技である。東京には大向うの会と呼ばれる研究会もあり、掛け声の伝統を受け継いでいる。

大向うは慣用句にもなった。「大向うを唸らせる」と言えば、目の肥えた通をも感嘆させるほどの見事な出来映えを指す。安い席で観る常連こそ最も厳しい目を持つ——劇場のその実感が、芝居を離れた広い世界でも通じる褒め言葉として、現代の日本語に残っている。

市川團十郎(いちかわ だんじゅうろう)家の屋号「成田屋」は、大向うの掛け声としてもっともよく知られるものの一つである。「成田屋!」の声が劇場に響く瞬間は、目の前の役者への、そして家が積み重ねてきた芸の歴史への喝采にほかならない。

舞台一階席上階席大向う「成田屋!」
大向う(おおむこう)——舞台から最も遠い上階後方の席。そこから飛ぶ屋号の掛け声が、間合いを計って役者の芝居を押し上げます。図は一般的な劇場の配置を簡略化したものです。
SOURCES

出典・監修

執筆
KABUKI Universe編集部
監修
市川團十郎
公開日
2026年8月15日(土)
最終更新日
2026年9月9日(水)
監修済み

監修は、市川團十郎に趣旨と要点を確認いただいたことを示します。本文は編集部の文章であり、市川團十郎の発言ではありません。文責は編集部にあり、記述の誤りは編集部の責任で訂正します。 編集方針を読む