naraku

奈落

ならくthe space beneath the stage—and the depths of despair

INSTANT ANSWER一撃回答

舞台や花道(はなみち)の床下に広がる空間。地獄を意味する仏教語に由来するとされ、日常語「奈落(ならく)の底」もここから生まれた。

奈落は、舞台や花道の床下に広がる空間を指す。廻り舞台(まわりぶたい)やセリ、花道のすっぽんといった舞台機構が据えられ、役者や大道具(おおどうぐ)の出入りと転換を支える、劇場の心臓部ともいえる場所である。語源は地獄を意味する仏教語(サンスクリット語 naraka の音写)とされ、暗く底知れない床下の空間が地獄を思わせることからこの名が付いたとされる。

日常語では「奈落の底」の形で定着し、抜け出しようのないどん底の状況を指す。江戸時代の奈落では、裏方たちが人力で廻り舞台を回していたとされ、暗がりの中で舞台の華やぎを支えるその働きが、言葉の陰影をいっそう深くしている。

現在の歌舞伎座(かぶきざ)の廻り舞台は直径約18メートル、その床下の機構は深さ約16.5メートルに及ぶ国内最大級の規模とされる。ビルの数階分に相当する空間が客席からは見えないまま床下に沈んでおり、「奈落」の名にふさわしい深さを今も保っている。

現代でのつかわれ方としては、「株価の急落で奈落の底に突き落とされた気分だった」「優勝目前の逆転負けに、チームは奈落に沈んだ」のように、絶頂からの急転直下を語る場面で使われる。高みとどん底の落差を一語で言い表せるところに、この言葉の強さがある。

奈落は特定の家に属さない、劇場機構全体の言葉である。荒事(あらごと)の躍動も舞踊の華やぎも、床下の機構と裏方の仕事に支えられて成立しており、市川團十郎(いちかわ だんじゅうろう)家が立つ舞台もまた例外ではない。

櫓劇場正面舞台奈落客席12345
  1. 1櫓 — 官許のしるし
  2. 2奈落 — 舞台と花道の床下
  3. 3セリ — 昇降の仕掛け
  4. 4すっぽん — 花道のセリ
  5. 5花道 — 客席を貫く道
横から見た断面のイメージ図です。実際の構造は劇場によって異なります。
SOURCES

出典・監修

執筆
KABUKI Universe編集部
監修
市川團十郎
公開日
2026年8月16日(日)
最終更新日
2026年9月9日(水)
監修済み

監修は、市川團十郎に趣旨と要点を確認いただいたことを示します。本文は編集部の文章であり、市川團十郎の発言ではありません。文責は編集部にあり、記述の誤りは編集部の責任で訂正します。 編集方針を読む