Q&A

衣裳・化粧・鬘

歌舞伎の衣裳は、複数枚用意されているのでしょうか?

ANSWER答え

ものによります。肌に近い襦袢や襟は替えを用意して洗い、刺繍の大物衣裳は一領を毎日手入れしながら千穐楽(せんしゅうらく)まで使うことが多いとされます。

KEY POINTS

ここだけ押さえる

  • 歌舞伎の衣裳は層構造で、汗を受け止めるのは肌側の襦袢や半襟である。
  • この肌側の層には替えを用意し、洗濯して回す。
  • 金糸の刺繍を施した打掛や大素襖のような外側の大物は、簡単に複製できない。
  • そのため大物は一領を、汗抜きと乾燥で守りながら千穐楽(せんしゅうらく)まで使うことが多い。
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興行の一か月

初日千穐楽

およそ一か月、同じ演目を毎日。休演日が入ることもあります。

観劇の一日

演目幕間

30分〜1時間半の演目が、食事のできる幕間を挟んで並びます。全部で3〜4時間ほど。

「長い」と身構えられがちですが、実際は短い演目が幕間を挟んで並ぶ構成で、体感は連作の展覧会に近いものです。一幕だけ観る方法もあります。

「千穐楽」をくわしく

くわしく

この問いに答える鍵は、歌舞伎の衣裳が層構造になっていることである。いちばん外側に、目に見える豪華な衣裳がある。その内側に、中着や襦袢がある。そして肌に直接触れる部分に、半襟(はんえり)や肌着がある。汗を受け止めるのは、この肌側の層である。

だから、替えが用意されるかどうかは層によって違う。肌側の襦袢や半襟、足袋といったものは、替えを複数用意し、洗濯して回す。これらは比較的作りやすく、洗える素材でできている。一方、外側の大物——金糸の刺繍を施した打掛や、『暫』の大素襖のような衣裳——は事情がまったく違う。織りから刺繍まで手仕事で、作るのに数か月から半年以上かかることもある。同じものをもう一領、というわけにはいかない。

そこで、大物は一領を守りながら使うことになる。毎日の終演後に風を通し、汗の湿りを抜いて翌日に備える。汗が直接届かないよう、肌側の層で止める。この二重の対策で、一か月の興行を同じ衣裳で勤め抜く。舞台の上で毎日新品のように見えている衣裳は、実は同じ一領が、毎晩の手入れによって支えられている。衣裳が何十年も舞台に立ち続けられるのも、この積み重ねがあるからである。

この回答に出てきた言葉

半襟
着物の襟に掛ける布。取り外して洗えるため、汚れを引き受ける役目を担う。
打掛
上に羽織る豪華な外衣。金糸の刺繍を施した大物が多い。
SOURCES

出典・記載の方針

本項は、歌舞伎について広く共有されている基礎的な知識に基づく編集部の回答です。慣行として伝えられる事項は「とされる」と記し、断定を避けています。

執筆
D-13編集部
公開日
2026年8月25日(火)
最終更新日
2026年8月25日(火)