Q&A

演目・文化・歴史

「狂言物」とは、どのようなものですか?

ANSWER答え

能狂言に取材した歌舞伎舞踊の一群を指すのが一般的です。松羽目物(まつばめもの)のうち、笑いを含む狂言由来の作品——『身替座禅』などがその代表とされます。

KEY POINTS

ここだけ押さえる

  • 能舞台を模した松羽目の装置で演じる作品のうち、狂言の笑いを歌舞伎化した系統を指す。
  • 『身替座禅』が代表作としてよく挙げられる。
  • 明治以降、能楽との交流の中で育った比較的新しいレパートリーである。
  • 「狂言」という語自体は、上方で芝居の演目一般を指す用法もあり、文脈で意味が変わる。
図で見る

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『京鹿子娘道成寺』の白拍子花子と桜木。振袖に烏帽子を合わせた舞姿で、扇を手に踊る二人の役者
歌川国貞(三代豊国)『四代目尾上菊五郎の白拍子花子と初代中村福助の白拍子桜木(娘道成寺)』万延元年(1860)歌川国貞(三代豊国)『白拍子花子と白拍子桜木(娘道成寺)』大英博物館(パブリックドメイン, Wikimedia Commons)

「所作事」をくわしく

江戸期〜明治頃

古典

型の蓄積とともに受け継がれる。上演のたびに補綴で台本を整える。

明治末以降

新歌舞伎

文学者が戯曲として書き、固定された台本から出発する。

戦後以降

新作

現代の小説・漫画・アニメなどを原作とするものも多い。

「古典」は年号で切れる概念ではなく、伝わり方の違いに近い言葉です。上演の現場ではこの三層で呼び分けられますが、境界の作品をどちらに数えるかは人により揺れます。長く上演され型が定着すれば、新作もやがて古典に近づいていきます。

「通し狂言」をくわしく

くわしく

「狂言物」を理解するには、まず松羽目物(まつばめもの)を知る必要がある。松羽目とは、舞台の正面に老松を描いた板を立てた装置のことで、能舞台の鏡板を模したものである。この装置を用い、能舞台に近い様式で演じる歌舞伎舞踊を松羽目物と呼ぶ。『勧進帳(かんじんちょう)』もその一つである。

この松羽目物のなかに、二つの系統がある。ひとつは荘重な能に取材したもの。もうひとつが、狂言の笑いを歌舞伎に移したもので、こちらを狂言物と呼ぶことが多い。狂言は能と同じ舞台で演じられる喜劇で、人間の欲や失敗を軽やかに笑う芸能である。その持ち味を歌舞伎に取り込んだのが狂言物で、『身替座禅』が代表作としてよく挙げられる。

歴史的には、比較的新しいレパートリーである。明治以降、歌舞伎と能楽の交流が進むなかで育ったもので、江戸期から連綿と続いてきた演目群とは成立の事情が違う。持ち味は、風刺と品格を両立させた笑いだとされる。品よく可笑しい、という難しい塩梅がこの系統の見どころになっている。なお注意しておきたいのは、「狂言」という語自体が多義的なことである。上方では芝居の演目一般を「狂言」と呼ぶ用法があり、通し狂言(とおしきょうげん)、時代狂言といった使い方をする。同じ字でも文脈で意味が変わるので、混同しないよう気をつけたい。

この回答に出てきた言葉

松羽目
正面に老松を描いた板の装置。能舞台の鏡板を模している。
狂言
能と同じ舞台で演じられる喜劇。上方では芝居の演目一般を指す用法もある。
SOURCES

出典・記載の方針

本項は、歌舞伎について広く共有されている基礎的な知識に基づく編集部の回答です。慣行として伝えられる事項は「とされる」と記し、断定を避けています。

執筆
D-13編集部
公開日
2026年8月25日(火)
最終更新日
2026年8月25日(火)