Q&A

演技・舞台表現

役者同士が顔を見合わせて首を横に振る、首に手拭いを当てる、首から払うなどの仕草は、観客の視線を誘導するためですか。それ以外の意味もありますか?

ANSWER答え

視線誘導の働きもありますが、それぞれが感情や状況を表す記号でもあります。しぐさは「意味」と「段取り」の両方を同時に担うとされます。

KEY POINTS

ここだけ押さえる

  • 歌舞伎のしぐさは、長い上演の中で記号として磨かれてきた。
  • 首を横に振る所作は否定や思案を、手拭いの使い方は照れ・涙・決意などを表すとされる。
  • 同時に、「次はあそこで何かが起きる」と観客の目を運ぶ段取りとしても働く。
  • 意味の層と運びの層が一つのしぐさに重なっているのが、様式演劇としての歌舞伎の作り。
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読み合わせ台本を声に出して確かめる立稽古動きと位置を合わせる附立(つけだて)囃子・ツケを入れて合わせる総ざらい通して確かめる初日幕が開く
稽古が数日で足りるのは、俳優も囃子方も裏方も、その演目の「型」を共有の言語として既に持っているから。稽古はゼロから作る場ではなく、互いの型と間を今回の座組に合わせて調律する場です。

「型」をくわしく

くわしく

この質問は、しぐさの機能をよく見ている。答えは「両方」である。歌舞伎のしぐさは、意味を運ぶ記号であると同時に、舞台の運びを整える段取りでもあり、その二つが一つの動作に重なっている。

まず意味の層から見ていく。歌舞伎のしぐさは、四百年の上演のなかで記号として磨かれてきた。首を横に振る所作は、否定や思案を表す。手拭い(てぬぐい)の使い方は特に語彙が豊かで、口元を隠せば照れや慎み、目に当てれば涙、きっちりと絞って首に掛ければ決意や覚悟——というように、同じ布が使い方によって別の言葉になる。観客はこれらを説明なしで読み取れるように育てられており、だから台詞が無くても場面が進む。

同時に、段取りの層がある。役者同士が顔を見合わせれば、観客の目は自然にその二人のあいだへ集まる。誰かが首を振れば、その動きに視線が引かれる。舞台には常に複数の俳優がいて、どこを見ればよいのか観客は無意識に探している。しぐさは、その「見るべき場所」を静かに指し示す信号として働く。次に何かが起きる場所へ、あらかじめ目を運んでおく——という設計である。意味と運びが分離せず、一つの動作に畳み込まれていること。これが、様式演劇としての歌舞伎の緻密さだと言える。

この回答に出てきた言葉

手拭い
薄手の木綿の布。小道具(こどうぐ)として、感情を表す語彙の豊かな道具になる。
段取り
舞台を運ぶための手順。観客の視線をどこへ導くかも段取りの一部。
SOURCES

出典・記載の方針

本項は、歌舞伎について広く共有されている基礎的な知識に基づく編集部の回答です。慣行として伝えられる事項は「とされる」と記し、断定を避けています。

執筆
D-13編集部
公開日
2026年8月25日(火)
最終更新日
2026年8月25日(火)