Q&A

演技・舞台表現

演じるのにふさわしい演目の段階はありますか。若いときに演じる役、経験を積んでから演じる役など、暗黙の約束はありますか?

ANSWER答え

あります。役と俳優の釣り合いを「にん(仁)」と呼び、若いうちに勤める役、芸と貫禄が満ちてから許される大役という不文律があるとされます。

KEY POINTS

ここだけ押さえる

  • 役と俳優の釣り合いを「にん(仁)」と呼ぶ。「にんに合う」という言い方をする。
  • 花形(はながた)の時期に磨く役と、芸と貫禄が満ちてから巡ってくる大役がある。
  • 勧進帳(かんじんちょう)』の弁慶のような役は、年齢と芸歴が満ちるのを待って巡ってくるとされる。
  • 役が俳優を育て、俳優が役に追いつく——この往復が歌舞伎の時間である。
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歌舞伎十八番

  • 不破
  • 鳴神
  • 不動
  • 象引
  • 勧進帳
  • 助六
  • 外郎売
  • 押戻
  • 矢の根
  • 関羽
  • 景清
  • 七つ面
  • 毛抜
  • 解脱
  • 蛇柳
  • 鎌髭

今日ごく普通に上演される上演の機会が限られる

七代目市川團十郎が天保年間に選定したとされる十八の演目。選定の時点で既に上演の絶えていたものも含まれており、以後の復活上演で少しずつ舞台に戻されてきました。完成品の棚ではなく、掘り起こしが続く鉱脈です。上演の多寡は時期によっても変わります。

「お家芸」をくわしく

くわしく

歌舞伎には「にん(仁)」という言葉がある。その役に、その俳優が適っているかどうかを言い表す語で、「にんに合う」「にんではない」といった使い方をする。年齢や技量だけでなく、その人の持つ雰囲気や柄までを含んだ、総合的な釣り合いを指す。この言葉が生きているところに、歌舞伎の配役観がよく表れている。

実際の順序としては、若手は花形(はながた)(はながた)と呼ばれる時期に、若さが生きる役を重ねる。二枚目(にまいめ)の色男、勢いのある敵役(かたきやく)、動きの多い立廻り(たちまわり)の役など、身体が利くうちに磨くべきものがある。一方で、その段階では勤められない役がある。一家の当主となって初めて許される家の芸の大役——たとえば『勧進帳(かんじんちょう)』の弁慶のような役は、年齢と芸歴が満ちるのを待って巡ってくるとされる。技術の問題だけではなく、舞台に立ったときの重み、周囲との関係、その名を背負う立場までが問われるからである。

この不文律は、窮屈な序列のように見えるかもしれない。しかし実際には、役が俳優を育てる仕組みとして働いている。ある役を勤めることで、次の段階の役に必要なものが身につく。そして俳優のほうも、いつかあの役を、と目標を持って年月を過ごす。役が俳優を育て、俳優が役に追いつく——この往復が、歌舞伎における時間の流れそのものだと言ってよい。同じ俳優が同じ演目を、二十代と五十代で演じれば、まったく違うものになる。それを前提にした芸能である。

この回答に出てきた言葉

にん(仁)
役と俳優の釣り合い。年齢・技量・柄・雰囲気を含んだ総合的な適性のこと。
花形
若手のうち、人気と将来を嘱望される俳優。またその時期。
SOURCES

出典・記載の方針

本項は、歌舞伎について広く共有されている基礎的な知識に基づく編集部の回答です。慣行として伝えられる事項は「とされる」と記し、断定を避けています。

執筆
D-13編集部
公開日
2026年8月25日(火)
最終更新日
2026年8月25日(火)