Q&A

演技・舞台表現

役者がキメの後に右手を右側へ、左手を左側へ示す仕草には、どのような意味がありますか?

ANSWER答え

型としての誇張表現で、感情の放出や場を制する力を大きく見せる所作と説明されることが多いです。細部の意味づけは演目と型により異なります。

KEY POINTS

ここだけ押さえる

  • 内にある力や心を、身体の外周まで押し広げる歌舞伎的な誇張の典型である。
  • 荒事(あらごと)では人間を超えた力の放射として働く。
  • 時代物(じだいもの)では、場を鎮め従える威として働くとされる。
  • 同じ形でも文脈で読みが変わるので、絵として覚えるより流れの中で観るのがよい。
図で見る

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読み合わせ台本を声に出して確かめる立稽古動きと位置を合わせる附立(つけだて)囃子・ツケを入れて合わせる総ざらい通して確かめる初日幕が開く
稽古が数日で足りるのは、俳優も囃子方も裏方も、その演目の「型」を共有の言語として既に持っているから。稽古はゼロから作る場ではなく、互いの型と間を今回の座組に合わせて調律する場です。

「型」をくわしく

くわしく

見得(みえ)やきまりの前後で、役者が両手を大きく左右に開いて示す——この所作は、歌舞伎を観ていると何度も目にする。日常の動作としては不自然なほど大きいが、それこそがこの所作の要点である。歌舞伎の演技は、内にあるものを外に押し出して見せる方向に発達してきた。手を開く所作は、その原理がいちばん分かりやすい形で現れたものだと言える。

意味づけは、演目と役の性質によって変わる。荒事(あらごと)の役であれば、人間を超えた力が身体の外へ放射している様として読める。身体の中に収まりきらないものが溢れ出している、という表現である。時代物(じだいもの)の重い役であれば、場を鎮め、周囲を従える威として働く。手を広げるだけで、その人物が空間を支配していることが示される。ほかにも、深い感情が一気に放たれる瞬間として使われることもある。

つまり、一対一で意味が決まっている記号ではない。個々の場面での意味は型のなかに埋め込まれており、同じ形でも文脈によって読みが変わる。だからこの所作は、写真や図で「これはこういう意味」と覚えるより、芝居の流れのなかで観るほうが理解しやすい。直前に何が起きたか、音楽がどうなっているか、相手役がどう反応しているか——それらと合わせて初めて、その手が何を言っているのかが分かる。

この回答に出てきた言葉

きまり
動きを決めて止めること。見得(みえ)ほど大きくない静止も含む。
時代物
武家や公家の世界を描いた歴史劇。重厚な様式が用いられる。
SOURCES

出典・記載の方針

本項は、歌舞伎について広く共有されている基礎的な知識に基づく編集部の回答です。慣行として伝えられる事項は「とされる」と記し、断定を避けています。

執筆
D-13編集部
公開日
2026年8月25日(火)
最終更新日
2026年8月25日(火)