jidaimono
時代物
じだいものhistory plays of the samurai and noble worlds
INSTANT ANSWER一撃回答
武家や公家の社会、遠い過去の出来事を題材とする演目の総称。様式美豊かな大きな演技で、歴史の世界を舞台に立ち上げる。
時代物は、江戸時代の観客から見て遠い世界——過去の事件や、武家・公家の社会に起きた出来事を扱う演目の総称である。『仮名手本忠臣蔵』『菅原伝授手習鑑』『義経千本桜』は三大名作と呼ばれ、人形浄瑠璃から歌舞伎に移された義太夫狂言の代表格として知られる。
同時代の庶民の暮らしを写す世話物に対し、時代物は誇張と様式美を大きく取り入れた重厚な演技で演じられる。歴史の人物に仮託して当代の事件を描くことも多く、虚構の距離があるからこそ描ける真実がそこにあった。
時代物が遠い過去に舞台を借りたのには、幕府が同時代の事件——とりわけ政治にかかわる出来事——をそのまま脚色して上演することを禁じていたという事情がある。元禄の赤穂事件に取材した『仮名手本忠臣蔵』は、南北朝の軍記『太平記』の「世界」に時代を移し、人物の名前も置き換えて上演されたとされる。様式という約束事の陰に、検閲をくぐり抜けるしたたかな知恵が隠れている。
市川團十郎家の荒事は、『暫』や『鳴神』のように時代物の世界を舞台とするものが多い。人間を超えた英雄が悪を払う荒事の様式は、歴史とまつろわぬ力が交錯する時代物の空間でこそ、もっとも大きく花開く。
この用語が分かる演目
- Kanadehon Chūshingura仮名手本忠臣蔵高師直に辱められた塩冶判官は、殿中で刀を抜き、切腹を命じられて家は取り潰される。演目を見る
- Sugawara Denju Tenarai Kagami菅原伝授手習鑑学問の神として名高い菅丞相(菅原道真)は、藤原時平の讒言によって大宰府へ流される。演目を見る
- Yoshitsune Senbon Zakura義経千本桜壇ノ浦の戦いののち、源義経は兄・頼朝に疑われ、都を追われて西へ落ちてゆく。演目を見る
- Shibaraku暫権力を握る公家・清原武衡は、意に従わない善良な人々を捕らえ、今まさに首を刎ねようとしている。歌舞伎十八番演目を見る
- Narukami鳴神高僧・鳴神上人は、朝廷への恨みから龍神を滝壺に封じ込め、国中を日照りに陥れている。歌舞伎十八番演目を見る
この語を読んだら、次はこれ
同じ舞台の上でつながっている言葉です。ひとつ知ると、もうひとつが分かりやすくなります。
出典・監修
- 執筆
- KABUKI Universe編集部
- 監修
- 市川團十郎
- 公開日
- 2026年8月15日(土)
- 最終更新日
- 2026年9月9日(水)
監修は、市川團十郎に趣旨と要点を確認いただいたことを示します。本文は編集部の文章であり、市川團十郎の発言ではありません。文責は編集部にあり、記述の誤りは編集部の責任で訂正します。 編集方針を読む