sashigane

差金

さしがねthe prop-handler's pole—and the hidden hand behind an act

INSTANT ANSWER一撃回答

作り物の蝶や小鳥を操る黒塗りの細い竿。人形浄瑠璃(じょうるり)では人形の腕を動かす棒を指し、陰で人を操る意味の日常語に転じた。

差金(さしがね)は、歌舞伎の小道具(こどうぐ)の一つで、黒塗りの細い竿の先に針金などを付け、作り物の蝶や小鳥を宙に舞わせる仕掛けをいう。人形浄瑠璃では、人形の腕に差し入れて手を操る棒を指す。操る後見(こうけん)や人形遣いの姿は「見えないもの」として扱われ、観客は蝶や人形の動きだけを見る約束になっている。

そこから、見えないところで人を操り、そそのかすことを「(誰かの)差し金」と言うようになったとされる。芝居の仕掛けの言葉が、そのまま人間関係の陰の力学を言い当てる日常語に転じた例である。

現代でのつかわれ方としては、「これはいったい誰の差し金だ」という時代劇さながらの台詞はもとより、「急な監査は本社の差し金らしい」のように、思いがけない出来事の背後に指図する者の気配を感じたときに使われる。見えない手の存在をひとことでほのめかす、切れ味のよい言い回しである。

差金が印象的に活躍する演目に、小姓弥生と獅子の精を一人の役者が踊り分ける『春興鏡獅子』がある。この作品は新歌舞伎(しんかぶき)十八番(じゅうはちばん(おはこ))の一つで、明治26年(1893)に九代目市川團十郎(いちかわ だんじゅうろう)が初演したとされ、宙を舞う二匹の胡蝶は差金の芸の見せ場としても知られる。

SOURCES

出典・監修

執筆
KABUKI Universe編集部
監修
市川團十郎
公開日
2026年8月16日(日)
最終更新日
2026年9月9日(水)
監修済み

監修は、市川團十郎に趣旨と要点を確認いただいたことを示します。本文は編集部の文章であり、市川團十郎の発言ではありません。文責は編集部にあり、記述の誤りは編集部の責任で訂正します。 編集方針を読む