Q&A

衣裳・化粧・鬘

歌舞伎の顔にある青い部分は、何を表しているのですか?口の周りの青も同じ意味ですか?

ANSWER答え

剃った後の毛根を表しています。月代や髭の剃り跡を青く見せることで、男らしさと力強さ、そして年齢を示します。口の周りの青も同じく髭の剃り跡です。

KEY POINTS

ここだけ押さえる

  • 青は「毛を剃ったあと、皮膚の下に残っている毛根」の色を表している。
  • 顔料は青黛(せいたい)と呼ばれる。月代の部分と、髭の生える口の周りに用いる。
  • 示すのは男らしさ・力強さ、そして年齢。若い二枚目(にまいめ)には濃く入れない。
  • 大悪人を表す「藍隈」とは別のもの。同じ青でも役割がまったく違う。
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紅隈

正義・若さ・あふれる力

藍隈

悪・怨霊・冷たい力

茶隈

鬼や妖怪など、人ならざるもの

色を見れば、その役の性質が伝わる——隈取は歌舞伎の「顔の言葉」です。隈取には多くの種類があり、図の色はおよその色味です。隈取をくわしく →

「隈取」をくわしく

くわしく

歌舞伎の顔を見ると、白い地の上に青い部分があることに気づく。額の上のほうが青いことがあり、口の周りが青いこともある。これを「青い隈取(くまどり)」だと思っている人は多いが、実は別のものである。

この青が表しているのは、剃った後の毛根である。江戸の武士や町人は月代(さかやき)——額から頭頂にかけての髪を剃り上げていた。剃ったばかりの頭皮は、毛根が皮膚の下に透けて青っぽく見える。舞台では、羽二重で地髪を包んだ上から肌色を塗り、月代にあたる部分に青黛(せいたい)という青い顔料を入れて、その剃り跡を作る。口の周りの青もまったく同じ理屈で、髭を剃った跡である。つまり「青く塗っている」のではなく、「剃ってある状態を描いている」。

だから青の入れ方は、その人物が何者かを語る。青がしっかり入っていれば、髭の濃い成人の男である——男らしさ、力強さ、そして年齢を帯びる。逆に若く優男の二枚目(にまいめ)には濃い青を入れない。剃り跡が目立つ顔にはならないからである。台詞で年齢を説明しなくても、顔の青みだけで「この人物は分別のついた大人だ」と伝わる。歌舞伎の化粧が記号の体系だというのは、こういうところに現れている。

混同しやすいので、はっきり分けておきたい。大悪人や怨霊に用いる藍隈(あいぐま)は、顔の筋を青い線でなぞる隈取であり、「人ならぬ気配」を表す。一方こちらの青は、線ではなく面で入れる地の色で、表しているのは剃り跡という現実の身なりである。同じ青い顔料を使っていても、役割はまったく違う。舞台で青を見たら、「線か、面か」を見分けるとよい。

この回答に出てきた言葉

月代
額から頭頂にかけて髪を剃り上げた、江戸の男の髪型。
青黛
舞台化粧に用いる青い顔料。剃り跡を表すのに使う。
羽二重
地髪を包む薄い絹の布。鬘を着ける前に頭に巻く。
SOURCES

出典・記載の方針

執筆
D-13編集部
公開日
2026年8月25日(火)
最終更新日
2026年8月25日(火)