Q&A

衣裳・化粧・鬘

隈取をするかどうかは、その日に決めるのですか?

ANSWER答え

いいえ。隈取(くまどり)の有無と種類は演目と役でほぼ決まっています。その日に変わるのは有無ではなく、線の濃さや太さといった加減だとされます。

KEY POINTS

ここだけ押さえる

  • 隈取(くまどり)の有無と種類は、演目と役が決まればほぼ決まる。当日の裁量ではない。
  • 荒事(あらごと)の主役には筋隈、公家悪には藍隈、というように役柄と対応している。
  • その日に判断するのは「するかどうか」ではなく、筆の加減である。
  • 顔色、照明、劇場の大きさに合わせて、濃さや太さを調整する。
図で見る

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紅隈

正義・若さ・あふれる力

藍隈

悪・怨霊・冷たい力

茶隈

鬼や妖怪など、人ならざるもの

色を見れば、その役の性質が伝わる——隈取は歌舞伎の「顔の言葉」です。隈取には多くの種類があり、図の色はおよその色味です。隈取をくわしく →

「隈取」をくわしく

くわしく

隈取は、その日の気分で足したり省いたりするものではない。役の性根を可視化する型の一部だからである。演目が決まり、役が決まれば、どの隈を取るかはほぼ決まる。荒事(あらごと)の主役なら紅の筋隈、公家悪なら藍隈、鬼や妖怪なら茶色系——というように、役柄との対応が体系として整っている。もし勝手に変えれば、観客は人物を読み違えてしまう。

では、俳優が毎朝鏡の前で何を判断しているのか。それは筆の加減である。同じ筋隈でも、その日の顔色によって映え方が違う。疲れが出ていれば、線を少し強めに入れることもある。劇場の大きさも効く。大劇場では遠くの席まで届く必要があるので、線を大きく太く。小さな小屋では、それほど強く入れなくてもよい。照明の設計によっても、赤の出方が変わる。

つまり、決まっているのは設計で、変わるのは実装である。型として何を描くかは動かないが、その日の条件に合わせてどう描くかは俳優の判断に委ねられている。歌舞伎の型が硬直したものではないと言われるのは、こういう部分を指している。同じ役を三十日勤めれば、三十通りの微差がある。同じに見えて、まったく同じ日は一日もない。

この回答に出てきた言葉

代々受け継がれてきた決まった形。設計は動かないが、実装には幅がある。
SOURCES

出典・記載の方針

本項は、歌舞伎について広く共有されている基礎的な知識に基づく編集部の回答です。慣行として伝えられる事項は「とされる」と記し、断定を避けています。

執筆
D-13編集部
公開日
2026年8月25日(火)
最終更新日
2026年8月25日(火)