Q&A
演技・舞台表現
「成田屋」などの屋号を掛ける大向うの声は、舞台上の役者にも聞こえていますか?
ANSWER答え
届いているとされます。良い掛け声は芝居の間に組み込まれ、役者の気を高める「共演」として歌舞伎の一部になっています。
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くわしく
まず前提として、大向うが呼んでいるのは俳優の個人名ではなく屋号(やごう)である。市川宗家なら「成田屋」、尾上菊五郎家なら「音羽屋」というように、家に付いた呼び名が使われる。個人ではなく家を呼ぶ——ここに、歌舞伎という芸能の性格がよく表れている。称えられているのは、その俳優一人の技量だけでなく、代々受け継がれてきた家の芸そのものである。
そのうえで、届いているかという質問への答えは「届いている」である。それも、単に音として聞こえているという以上の意味で届いている。掛け声は、見得が極まる瞬間、花道からの出、引っ込みといった、芝居の呼吸の急所に掛かる。役者はその声を間のうちに受け取り、次の動作へ移る。つまり掛け声は、芝居の外から飛んでくる応援ではなく、芝居の内側の時間に組み込まれているのである。
だから、良い掛け声は芝居を締める。掛かるべき一点に、短く、良い声が掛かれば、その瞬間の密度が上がる。逆に、間の外れた声は芝居を緩ませてしまう。この技術が難しく、大向うの会が稽古を積んできた理由もそこにある。役者と観客が三百年かけて育ててきた、劇場の対話の形——「成田屋!」の一声は、その積み重ねの上に響いている。
この回答に出てきた言葉
- 屋号
- 俳優の家に付いた呼び名。市川宗家は成田屋、尾上菊五郎家は音羽屋。
- 大向う
- 劇場のいちばん後方の席。またそこから掛かる掛け声のこと。
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SOURCES
出典・記載の方針
- 執筆
- D-13編集部
- 公開日
- 2026年8月25日(火)
- 最終更新日
- 2026年8月25日(火)