Q&A

演技・舞台表現

ツケの拍子木を鳴らさない演目はありますか?

ANSWER答え

あります。ツケは動きを強調する効果音なので、静かな世話場や松羽目物(まつばめもの)の格式ある場面、新歌舞伎(しんかぶき)などでは打たない、または控えることがあります。

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ツケ板(舞台上手の床に置く)バタバタ走る・立廻りバッタリ見得が決まるトントン小さな動き
ツケ——舞台の上手に置いた板を、二挺の木で打って鳴らす音。走る場面、見得が決まる瞬間、細かな仕草。音が動きに輪郭を与えます。呼び名は劇場や場面によって異なります。

「ツケ」をくわしく

くわしく

ツケは歌舞伎を象徴する音だが、すべての演目で常に鳴っているわけではない。役割を確認しておくと、ツケは走り、立廻り(たちまわり)見得(みえ)といった「動きの山」を音で打ち留めるためのものである。したがって、動きの山が無い場面、あるいは音で強調しないほうがよい場面では、そもそも出番が無い。

使わない、あるいは大きく控える例をいくつか挙げる。ひとつは松羽目物である。能や狂言に取材し、能舞台を模した装置で演じるこの系統では、演出全体が能の格式に合わせて抑制される。派手な効果音は、その様式にそぐわない。もうひとつは、明治以降に書かれた新歌舞伎である。文学者が戯曲として書いたこれらの作品は、写実的な演技を志向するものが多く、様式的な効果音を使わない場面が多いとされる。

そして、静かな世話場。庶民の暮らしを描く場面では、感情が抑えて進むことが多く、ここに強い木の音が入ると芝居が壊れてしまう。生世話物(きぜわもの)と呼ばれる、より写実に寄った作品群では特にそうである。つまり、ツケが「無い」ことも演出の選択なのである。音がしないことによって場面の質が変わる——観客としては、鳴っているときだけでなく、鳴らないときにも注意を向けてみると、演目ごとの設計が見えてくる。

この回答に出てきた言葉

立廻り
様式化された立ち回り・殺陣の場面。ツケが最もよく働く場面の一つ。
生世話物
より写実に寄った世話物(せわもの)。江戸の庶民の暮らしを細やかに描く。
SOURCES

出典・記載の方針

本項は、歌舞伎について広く共有されている基礎的な知識に基づく編集部の回答です。慣行として伝えられる事項は「とされる」と記し、断定を避けています。

執筆
D-13編集部
公開日
2026年8月25日(火)
最終更新日
2026年8月25日(火)