Q&A

演技・舞台表現

開演前に聞こえる太鼓は、実際に叩いているのですか。それとも録音ですか?

ANSWER答え

「着到(ちゃくとう)」と呼ばれる開演前の囃子(はやし)で、歌舞伎の劇場では囃子方が実際に演奏するのが本来の形とされます。運用は劇場・公演により異なります。

KEY POINTS

ここだけ押さえる

  • 開演前に太鼓と笛で奏されるこの囃子(はやし)を「着到」と呼ぶ。
  • 江戸の芝居小屋で開場や開演を知らせた一番太鼓の系譜を引いている。
  • 歌舞伎の音は原則としてすべて生演奏で、着到も囃子(はやし)方が勤めるのが本来の姿とされる。
  • ただし運用は劇場や公演によって異なる。
図で見る

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舞台黒御簾下手ツケ上手花道客席↑ この図は客席から舞台を見た向き
音は左右から来ます。客席から見て左——下手が黒御簾で、唄・三味線・鳴物がここから流れます。右——上手ではツケが役者の動きを打ち留めます。同じ木の音でも、柝は劇場全体の進行を司る別の役割です。

「黒御簾」をくわしく

くわしく

劇場に入って席に着くと、開演前から太鼓と笛の音が聞こえてくる。これを着到(ちゃくとう)という。まだ幕は開いておらず、客席には人が出入りしている——そういう時間に流れている音楽である。

この慣習の来歴は江戸の芝居小屋にさかのぼる。当時は、櫓(やぐら)の下や小屋の入口で太鼓を打ち、開場や開演を町に知らせた。これを一番太鼓といい、音が町に届くことで「今日は芝居がある」と分かる仕組みだった。現代の着到は、その系譜を引く慣習である。実務的な告知の機能は失われたが、幕開きが近いことを客席に告げ、劇場の空気を作りはじめる役割は残っている。

録音か生かという質問については、歌舞伎の音は原則としてすべて生演奏である、というのが答えの土台になる。舞台上の下座音楽も、竹本(たけもと)も、長唄(ながうた)も、その場で演奏されている。着到もまた、囃子方が実際に勤めるのが本来の形とされる。ただし、運用は劇場や公演によって異なる場合があるので、「必ず生である」と断定はできない。それでも、幕が開く前から人が音を出しているという事実は、この芸能の性格をよく表している。歌舞伎の劇場では、音は再生されるものではなく、その場で生まれるものである。

この回答に出てきた言葉

着到
開演前に奏される囃子(はやし)。幕開きが近いことを客席に告げる。
一番太鼓
江戸の芝居小屋で開場・開演を町に知らせた太鼓。着到の源流にあたる。
囃子方
笛・太鼓・鼓などを担当する演奏者。黒御簾(くろみす)の中で舞台を支える。
SOURCES

出典・記載の方針

本項は、歌舞伎について広く共有されている基礎的な知識に基づく編集部の回答です。慣行として伝えられる事項は「とされる」と記し、断定を避けています。

執筆
D-13編集部
公開日
2026年8月25日(火)
最終更新日
2026年8月25日(火)