Q&A

衣裳・化粧・鬘

『鎌髭』で、悪七兵衛景清の隈取の上部が赤、下部が青なのは、どのような意味ですか?

ANSWER答え

隈取(くまどり)では紅が血気と正義の力、藍が怨念や人ならぬ気配を表すとされ、二色の併用は景清(かげきよ)という人物の二面を映すものと説明されることが多いです。

KEY POINTS

ここだけ押さえる

  • 悪七兵衛景清(かげきよ)は、平家滅亡ののちも源氏への恨みを抱き続ける剛勇の武者。
  • 隈の色の文法では、紅は内に滾る力を、藍は尋常ならざる執念を示すとされる。
  • 一つの顔に二色を置く拵えは、この人物の引き裂かれた性根の可視化と読める。
  • ただし隈の細部は上演や家の型によって異なり、決定版の説明があるわけではない。
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紅隈

正義・若さ・あふれる力

藍隈

悪・怨霊・冷たい力

茶隈

鬼や妖怪など、人ならざるもの

色を見れば、その役の性質が伝わる——隈取は歌舞伎の「顔の言葉」です。隈取には多くの種類があり、図の色はおよその色味です。隈取をくわしく →

「隈取の色」をくわしく

くわしく

まず人物の説明から始めたい。悪七兵衛景清(あくしちびょうえかげきよ)は、平家に仕えた武者である。平家が滅びたのちも源氏への恨みを抱き続けた人物として、能や歌舞伎、浄瑠璃(じょうるり)に繰り返し登場する。単なる敵役(かたきやく)ではない。忠義に殉じた者としての気高さと、執念に取り憑かれた者としての恐ろしさを、同時に背負っている。

この人物像を踏まえると、隈の色の意味が読めてくる。歌舞伎の隈取には、色の文法がある。紅は血気、若さ、そして正義の力を表すとされる。藍は、怨念や超自然的なもの、人ならぬ気配を帯びる。景清の顔に二色が置かれるということは、この二つの性質が一人の人物のなかに同居していることを示している、と説明されることが多い。上部の紅は内に滾る武者としての力を、下部の藍は尋常ならざる執念を——という読み方である。

ただし、注意しておきたいことがある。隈の細部は、上演によって、また家の型によって異なる。同じ景清でも、線の入り方や色の配置が違うことがあるし、意味づけの説明も一つに定まっているわけではない。歌舞伎の型には、まず効果があって、意味づけが後から語られたものが多いとされる。だから「この色はこういう意味だ」と一対一で覚えるより、色の文法という緩やかな体系を知ったうえで、目の前の顔が何を語っているかを読む——という構えのほうが、実際の観劇には役立つ。『鎌髭(かまひげ)(かまひげ)』は歌舞伎十八番(じゅうはちばん(おはこ))の一つで、景清の剛勇ぶりを描く演目である。

この回答に出てきた言葉

平家
平安末期に権勢を誇った一族。源氏との戦いに敗れて滅びた。
怨念
晴れることのない深い恨み。歌舞伎では藍の隈で表されることが多い。
SOURCES

出典・記載の方針

本項は、歌舞伎について広く共有されている基礎的な知識に基づく編集部の回答です。慣行として伝えられる事項は「とされる」と記し、断定を避けています。

執筆
D-13編集部
公開日
2026年8月25日(火)
最終更新日
2026年8月25日(火)