Q&A

衣裳・化粧・鬘

歌舞伎の鬘には、どのような種類がありますか?家によって決まった鬘はありますか?

ANSWER答え

立役(たちやく)だけで約千種あるとされ、身分・年齢・職業ごとに形が決まっています。口上(こうじょう)では、市川宗家(いちかわそうけ)が油付きまさかり、一門が袋付きまさかりを用いると伝えられます。

KEY POINTS

ここだけ押さえる

  • 鬘の形は身分・年齢・職業で決まる。立役(たちやく)で約1000種、女方(おんながた)で約400種あるとされる。
  • 後ろ髪(髱)の仕立てに、油で固める「油付」と、ふくらませる「袋付」がある。
  • 油付には「研ぎ出し」などの仕上げがあり、艶の出し方まで型が決まっている。
  • 「まさかり」は鉞に似た形から。口上(こうじょう)では宗家(そうけ)と一門で仕立てを違えると伝えられる。
図で見る

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  1. 台金(だいがね)薄い金属を役者の頭の形に打ち出す。鬘の土台
  2. 毛を通す台金に毛を通す。人毛が中心で、ヤクの毛なども併用されるとされる
  3. 結い上げ床山が役の身分・年齢に合わせて髷を結う。公演中は毎日結い直す
鬘(かつら)は、被り物ではなく「役の頭」そのもの。作る鬘師と、結い上げて毎日手入れする床山の分業で支えられています。図は工程を簡略化したものです。

「鬘」をくわしく

くわしく

歌舞伎の鬘は、驚くほど種類が多い。立役で約千種、女方(おんながた)で約四百種あるとされる。これは装飾の都合ではなく、鬘が人物の説明を担っているからである。武士か町人か、若いか年輩か、堅気か遊女か、身なりを整えているか落ちぶれているか——それらがすべて髷の形と結い方で示される。観客は幕が開いた瞬間に、髪型だけでその人物の素性をかなり読み取れる。

分類の軸の一つが、後ろ髪の仕立てである。立役の髱(たぼ)には、油で固めてぴたりと収める「油付(あぶらつき)」と、ふくらみを持たせて結い上げる「袋付(ふくろつき)」がある。油付にはさらに「研ぎ出し」と呼ばれる仕上げがあり、艶の立て方まで型として決まっている。同じ役でも、この仕立てが違えば人物の印象は変わる。硬く締まった油付は折り目正しさを、ふくらみのある袋付はやわらかさを帯びる。

質問の後半、家に固有の鬘があるか、という点について。「まさかり」と呼ばれる形が伝えられている。鬢のあたりの形が鉞(まさかり)——大きな斧に似ていることからの名で、加賀鳶(かがとび)、すなわち加賀前田家に召し抱えられた火消したちと同じ髪型にあたるとされる。江戸で粋とされ、男らしい形と見なされてきた髪型である。

そして、襲名(しゅうめい)などの口上でこの鬘を用いる際、市川宗家は「油付きまさかり」、一門の俳優は「袋付きまさかり」を用いると成田屋(なりたや)の公式に記されている。同じまさかりでありながら、仕立てを違えることで宗家(そうけ)と一門の別を示すわけである。舞台の上で誰が何を着けているかが、そのまま家の関係を語っている——鬘が単なる被り物ではないというのは、こういう意味である。なお、こうした細かな伝えは家ごとに異なり、外から一律に語れるものではない。

この回答に出てきた言葉

髱(たぼ)
後頭部に張り出す髪の部分。ここの仕立てで鬘の性格が変わる。
まさかり
鉞に似た形の鬘。加賀鳶と同じ髪型とされ、粋で男らしい形と見なされてきた。
加賀鳶
加賀前田家に召し抱えられた火消し。その粋な身なりは江戸で知られた。