Q&A
衣裳・化粧・鬘
舞台化粧には、家ごとの流派や伝統がありますか?
ANSWER答え
あります。同じ役の隈取でも筋の引き方や色味に家ごとの型があるとされ、化粧は口伝と実地で親から子へ受け継がれます。
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くわしく
隈取は、初代市川團十郎が創始したと伝えられる様式化粧である。だから市川家の芸とは、そもそも分かちがたく結びついている。ただし、隈取が市川家だけのものだというわけではない。他の家も荒事の役を勤めるし、そのとき隈を取る。そこで、家ごとの差が出てくる。
差はどこに出るのか。線の太さである。同じ『暫』の筋隈でも、太く力強く引く伝えもあれば、やや細く鋭く引く伝えもある。払い方——線の終わりをどう抜くか。ぼかしの加減——線の縁をどこまで柔らかくするか。眉の位置と角度。目の周りの処理。こうした細部の一つひとつに、家や役者の伝えがあるとされる。舞台では一瞬で通り過ぎる違いだが、写真や絵で並べると、確かに別のものだとわかる。
この差が受け継がれる仕組みは、歌舞伎らしい。化粧は俳優自身が施すものなので、教わるのは楽屋である。父が化粧をしているところを子が見る。自分でやってみて、直される。文字の教本があるわけではなく、口伝と実地で渡されていく。そして興味深いのは、写すだけでは終わらないことである。父の顔と自分の顔は骨格が違う。同じ線をそのまま引いても、収まらないことがある。だから俳優は、先代の化粧を手本にしながら、自分の顔で成立する線を探していくことになる。受け継ぎながら、自分のものにする——歌舞伎の伝承の形が、化粧という日々の作業のなかにもそのまま現れている。
この回答に出てきた言葉
- ぼかし
- 線の縁を指でぼかして柔らかくすること。加減に家ごとの伝えがある。
- 口伝
- 文字にせず、口で直接伝えること。化粧もこの形で受け継がれる。
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SOURCES
出典・記載の方針
本項は、歌舞伎について広く共有されている基礎的な知識に基づく編集部の回答です。慣行として伝えられる事項は「とされる」と記し、断定を避けています。
- 執筆
- D-13編集部
- 公開日
- 2026年8月25日(火)
- 最終更新日
- 2026年8月25日(火)